昔の回路・基板設計

近年はHobbyレベルを超えた実用性を持った電気系CADソフトがFreeで使える時代となっており、いろいろな意味で変わってきました。

以前私が勤めていた会社(もう世の中からは消えてしまいましたが)は、ベンチャー企業と呼ばれる走りの会社でした。
その会社は、主にヨーロッパ向けビジネスコンピュータや外資向けPOSを作ってました。
まだパソコンやPCという言葉がなく、コンピュータっていうとIBMの370とか3081など大型のもので、小型のコンピュータはIBM PC, TRS80, PET, Apple IIや国内ではPC8001ような高級HobbyのPCの時代です。(わかりやすく以下PC)

その会社では、私はPCのハードウェア設計をやっていました。
当時はCPU+TTL+機能LSIによる設計が主体だったので、PC系基板は、1枚の基板上に100個以上のICが乗っているのが普通で、基板サイズも30cm角を超えていました。
機能LSIは、パラレル、シリアルなどの通信用、CRTやFDのインターフェース用がありました。

すべて(設計からマニュアル書きまで)を手で行うので、多人数で分散しての設計が難しく(小さな会社で設計屋も少なかったせいもありますが)、多くの場合1つの製品のハード設計屋がそれぞれ1人で作ってました。インターネットで便利に検索できるのはずっと先の世界なので、頼みの綱は10cmくらい厚さがある半導体マニュアルで、何十冊も机の前後に山のように積み重ね、設計していました。回路図もA3で10枚以上ありましたが、当然すべて手設計です。Lotus123やWordStar、WordMasterなどがビジネス用に使われ始めた時代ですが、とてもPC設計に利用できるものではありません。

後半は回路図CADとしてWACOMのECADがでてきてずいぶん楽になりました。
そのころ基板CADはIBMPC用にプリント基板用が登場するのですが、全く実用域にありませんでした。←出力はドットプリンタに重ね打ちして出力

当時はプリント基板を作るということはものすごくお金がかかることで、回路図は手書きし、それを基板設計屋にだし、基板屋がそれを作るといった分業でした。

設計屋さんは初期は拡大寸法で手張りアートワークによりパターンをつくり、その手張りフィルムを検図してました。
最初に部品配置を決定し、次に透明フィルムにICホールの丸いランド(Round Holeが日本語なまった)を部品配置に合わせて貼ります。次に黒いテープでそのランド間をつないでいきます。
回路図が手書きですからネットリストは手で作ります。

検図が終わると製版フィルム作成。これはリスフィルムっていう濃淡のない白黒のネガフィルムで、これをもとにシルク版を作成し、その後刷版をつくり基板を作っていました。
多層版はちょっとした衝撃でした。劇的に基板密度が上がりました。
フォトレジストによるダイレクト製版で、精度が上がってきたのでピン間2~3本となってきて現在の基板に近いものとなりました。

歴史的には数十年と非常に短期間であるものの、PCが世の中に与えた進歩と変化はすさまじいものを感じます。

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